【歌モノ弦楽四重奏の最高峰】ベドルジハ・スメタナ『弦楽四重奏曲第1番 ホ短調「わが生涯より」』
チェコ音楽の創始者としてみなされているベドルジハ・スメタナ、今から194年前の1824年3月2日に生まれた彼は、聴力を失いつつも名曲を残しながら、次第に精神の病に侵され、正気を取り戻すことなく亡くなってしまいますが、それまでに国際的には、6つの交響詩から成る『わが祖国』と、オペラ『売られた花嫁』、弦楽四重奏曲『弦楽四重奏曲第1番 「わが生涯より」』などの傑作を書き残しています。
そして本日3月26日は、弦楽四重奏の中でも最高峰の名曲『わが生涯より』の初演日とされています。
“聴力を失ったスメタナが、プラハからヤブケニツェへと隠遁して間もない1876年10月頃から作曲が開始され、同年末頃に完成。しかし、第3楽章が技術的に困難であるとされたことや、様式的に欠陥があると指摘され、初演の引き受け手がなかなか見つからなかった。完成から2年が経過した1879年3月26日に、スメタナの友人であるスルブ=デブルノフの家でようやく初演された(試演とも)。このときヴィオラ奏者を務めたのがアントニン・ドヴォルザークであった。公開初演はスルブ=デブルノフ家での試演から3日後の、1879年3月29日にフェルディナント・ラハナーやアロイス・ネルーダ、ヤン・ペリカーン、ヨゼフ・クレハンの4名による演奏でプラハで行われた。初演を引き受けた4名は、スメタナが隠遁する前に指揮者として活動していた仮劇場のオーケストラの中心メンバーであった。また、この曲はフランツ・リストの眼前でも演奏されており、リストはこの作品に熱狂したという。”~Wikipediaより~
しょっぱなからビオラのソロが炸裂するこの四重奏は、演奏していても思いますが、4つの楽器がそれぞれを支えあって構築していくベートーベンのような四重奏とは異なり、それぞれの楽器が独立して旋律を歌い込みながら結果的に四重奏を構成しているような思いに囚われます。それだけに誰も助けてはくれませんので精神的にキツイ。まるで氷の刃の上を歩いているかの如き緊張感。
そうありながらも旋律は哀愁漂う美旋律に溢れ、これがまた人気を高める原因となっており、ビオラに名手をもつ弦楽四重奏団はこぞってこの曲を取り上げています。
名盤と呼ばれるのは、チェコが誇る弦楽四重奏団の最高峰、その名もスメタナ弦楽四重奏団が遺した下記ディスク。名手シュカンパの猛烈なソロが耳に残ります。
ところどころの歌い回しがやはりチェコならではの処理なのか、現代的な、機能的な弦楽四重奏団とは異なる薫りを放ちます。
同じくチェコの最近の録音で行くなら、実力派カルテットのパヴェル・ハース弦楽四重奏団の演奏から。
超絶的な技巧と、圧倒的な音量で、この作品が持つ凄みを表現しようとしているのか、強めの音色で歌い込んでいきます。
というところで、また次回。