①名コンサートマスター
あの帝王ヘルベルト・フォン・カラヤン率いるベルリンフィルハーモニー管弦楽団の黄金時代を長く支えたの第一コンサートマスターといえば、ミシェル・シュヴァルベ(Michel Schwalbé)、トーマス・ブランディス(Thomas Brandis)、そしてレオン・シュピーラー(Leon Spierer)の3人が非常に印象深く、圧倒的なリーダーシップでカラヤンにも引けを取らない堂々とした出で立ちでオケを引っ張る姿に往時の勢いを感じさせます。80年代に入ってから以降の安永徹、ダニエル・スタブラヴァ(Daniel Stabrawa)もまた、その時代の名残や薫りを感じることが出来てステキですよね。
同じようにウィーンフィルで言えば名コンサートマスターとして知られるゲルハルト・ヘッツェル(Gerhart Hetzel)、そしてその跡を継いだウィーンフィルの顔、ライナー・キュッヒル(Rainer Küchl)が知られるところです。
やっぱり、オーケストラは究極の集団芸術ではあるものの、それでありながら傑出した個性の集まりであることも事実で、それぞれが輝くスター級の実力者の持ち主でなければならない、と思います。もちろん、スター級のソリストを集めてもスター級のオーケストラにはならない、と言うあたりが音楽の世界の難しさを表していて、アンサンブルもまたひとつの瞬間芸術なのだな、と聴いていて思う瞬間です。
そんなことをぐるぐると考えながら、在任期間4年ながら名コンサートマスターと呼ばれたヴァイオリニストに今回はスポットを当ててみましょう。
②ニューヨークフィルの黄金時代を支えた名手
オーケストラの本場、ヨーロッパから離れたアメリカはニューヨークにデヴィッド・ナディエン(David Nadien)という名のヴァイオリニストがいました。1926年生まれの生粋のニューヨーカーです。
ブルックリンのプロボクサーの家に生まれたNadienは、幼い頃から音楽好きの父親からヴァイオリンの手ほどきを受け、その後マネス音楽学校を経てジュリアード音楽院に進学してイヴァン・ガラミアンに師事。さらにアドルフォ・ベッティやアドルフ・ブッシュの薫陶も受け、1946年レーヴェントリット国際コンクールで優勝した名手です。ソリストとして活躍したのち、名指揮者レナード・バーンスタインの招きで名手ジョン・コリリアーノ(John Corigliano Sr. )のあとを継ぎ1966年にニューヨークフィルハーモニック交響楽団のコンサートマスターとなりました。
決して上背があるコンサートマスターではありませんでしたが、極上の美しい音色と、暖かみのあるビブラートが相俟って得も言われぬオーラを醸し出す、そんな存在です。
ソリスト時代の演奏で言えばハンガリー国立管弦楽団とのブルッフ、ニューヨークフィルハーモニック交響楽団とのチャイコフスキーのコンチェルトがそれぞれとても美しい出来です。
<ブルッフ/ヴァイオリン協奏曲>
<チャイコフスキー/ヴァイオリン協奏曲>
これらの録音を聴いていて、協奏曲も良いけれど、小品を見事に可愛く仕上げることに掛けては、これは現代のヴァイオリニストでもまずなかなかいないのでは?と思えるほどの出来で、これはマジで一聴の価値ありだなぁ、と思います。
ニューヨークフィルハーモニック交響楽団のコンサートマスターとして君臨したのは1966年から1970年とほんの僅かでしたが、そのバーンスタイン時代のニューヨークフィルハーモニック交響楽団では管楽器、打楽器含めて名手揃い、その中でもNadienは演奏面で華々しさと流麗さでもって貢献しました。
最後に、バーンスタインによる白鳥の湖から『Pas de deux(パ・ド・ドゥ)』。
この演奏は涙無くして聴けません。こんな美しい演奏聴いたことないよ。こんな在りし日のNadienの演奏に触れられるなんていい世の中になったものです。
最後にバーンスタインも「ブラボー」と言わざるを得ません。
映像は有りませんが、同時期に名演がレコードにも遺されています。
少し高いけどボックスセットもあります。
バーンスタインの語り口って明快だから意外と好き。
と言うことで、また次回。
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