クリスマス・イヴ(Christmas Eve)って、クリスマスの前夜、つまり12月24日の夜を意味するのは誰しも知っていて「Evening(夜、晩)」と同義の古語「even」の語末音が消失したもの、とされています。
もともとユダヤ暦およびそれを継承する教会暦では、日没をもって日付の変り目とする、という考え方があって、この種の暦を採用する教会では、クリスマス・イヴの日没からクリスマスを起算するため「クリスマス・イヴ」は既にクリスマスに含まれている、という考え方になります。
ということで、教会においては、クリスマス・イヴに多くの教派(正教会]・聖公会]・プロテスタント)で晩の礼拝が行われます。日没を日付の変わり目としている教会暦では12月24日の晩は、既にクリスマス当日に入っているため、クリスマスに入ってすぐに最初のクリスマス礼拝が行われていると位置づけられています。
海外と接するようになって思うのが、結構数多くの国々ではクリスマスは家族で過ごす日とされていて、そもそもお休みであることも多いです。イルミネーションなどで飾られる雰囲気は日本と変わりませんが。
その昔は(といっても中世までは)ドイツなど欧州でもクリスマスは馬鹿騒ぎするイベントとして根付いていたようですが、キリスト教の世俗化を嘆いていた宗教改革者の啓蒙運動により、長い年月を経て見直される様になっていまのような形になったと言われます。
ところがどっこい、キリスト教の何たるか、というよりもそのイベント性を捉えるのに長けた日本では(最近は日本に限らず中国、韓国も同様ですが)日本では「恋人と過ごす日」と言う認識が「家族と過ごす日」とされる欧米諸国よりも多いので、レストラン及びホテルの予約はほぼ満席・満室になるのがアタリマエ。
日本ではクリスマスは祝日ではない上に、年末だし師走だし、、、って仕事が増えることもあり、家族と過ごさなくてはならないといったような、欧米では当たり前のクリスマスやクリスマス・イヴにどう過ごすかという決まりや風習はないのです。
またイヴの意味を「夜」ではなく「クリスマスの前日」と勘違いしている人が多いので、クリスマスの前々日である12月23日を「イヴイヴ」と呼ぶという力技も増えているのが事実です。
なので、イブイブからイブ、そしてクリスマスに至るまでの2泊3日をどう過ごすか、日本男子の多くが相当時間を掛けて計画を練るようになって久しいわけです。
そいういうお祭り気分な男性諸氏にはそぐわないクリスマスキャロルが幾つかありますが、それはまさにクリスマスの精神に則った讃美歌のたぐい。
さすがに讃美歌をバックにどんちゃん騒ぎはできませぬ。
『きよしこの夜』(Stille Nacht)とは、世界的に有名なクリスマス・キャロルのひとつで、静謐なメロディの中にも温かい精神性と言うか温もりを感じるとても素敵な曲。
讃美歌を発祥にして様々なアレンジでクリスマスの夜を飾ります。
Pentatonix「Silent Night」
この曲、由来が結構面白いと言うか、トラブルから生まれた傑作でして、1818年12月25日にオーストリアのオーベルンドルフの聖ニコラウス教会で初演されたのですが、「クリスマス・イヴの前日、教会のオルガンが壊れて音が出なくなり、クリスマスに歌う賛美歌の伴奏ができなくなってしまい、急遽壊れたオルガンの教会の神父ヨゼフ・モーアが『Stille Nacht』の詞を書き上げ、オルガン奏者のフランツ・クサーヴァー・グルーバーに、自詞にギターで伴奏できる讃美歌を作曲してくれるように依頼を行ったというのがキッカケ。グルーバーは最初「教会でギターを弾いても誰も気に入らないのではないか?」と気にしていたようですが、グルーバーは一晩中考え続けて、ついにこの曲を完成させたとされています。「曲が完成したのは教会でミサが始まるわずか数時間前のことであった」という逸話があるようですが、近年の研究では、実は数年前にヨゼフは詩を完成させていたという説が有力です。とは言え、グルーバーが短期間で作曲したのは正しいと推測されています。
そんな短時間で書き上げられたとは思えないほどに美しい聖なる夜を讃えるこの名曲が、どうにもこうにもぶっ壊れた方向にアレンジした現代の大作曲家がこちら。
アルフレート・ガリエヴィチ・シュニトケ(Alfred Garyevich Schnittke、1934年-1998年)さんという、ソビエト連邦のドイツ・ユダヤ系作曲家ですね。無調、拍節感の放棄、12音技法、特殊奏法の多用、極端なポリフォニー、打楽器的な効果、新しい記譜法云々・・・個人的には全く触手が伸びない作曲家の類ですが、なんせクリスマスですから。ちょっと聴いてみましょう。
Alfred SCHNITTKE「Stille Nacht」
GIDON KREMER, Violine / Elena Kremer, Piano
きわめて超絶技巧であることにはかわり有りませんが、なんせあの美しい名曲がここまでにグロテスクになっちゃうのかという、何となくのイメージは「ひとりアルコールに溺れて妄想特急」な状態の精神性と言うべきか、なんと言うか。
まぁ、ぜひこの曲をバックにステキな夜をお過ごしください(過ごせるか!)w。
もういっちょ、メリークリスマス!
それではまた次回。