『栄光の殿堂 第3幕のガヴォット』ジャン=フィリップ・ラモー
「Le Temple de la Gloire Act.III Gavotte」by Jean-Philippe Rameau
ジャン=フィリップ・ラモー(Jean-Philippe Rameau, 1683年-1764年)は、フランス・バロック音楽の作曲家・音楽理論家。1世代前の中期フランスバロックの作曲家、ジャン=バティスト・リュリ(1632年 – 1687年)が確立したフランス風のオペラの伝統を継承し、いくつかのオペラ=バレ(opéra-ballet)や音楽悲劇(tragédie en musique)を残したことで知られています。
ちなみに、音楽悲劇(tragédie en musique)とはフランス独自のオペラのジャンルでして、叙情悲劇(tragédie lyrique)とも言いますが、この叙情悲劇は、歌手の歌うレシ(récit)と舞曲から構成されていました。レシはレチタティーヴォをフランス語の発音にあうように改変したものであり、舞曲は宮廷バレエから引き継がれたもの、なのですな。これを打ち立てたジャン=バティスト・リュリからラモーが継承して発展させた訳です。
オペラにおけるレシ(歌手の歌うパート)の様式はほぼ完全にリュリが確立した形式に則していますが、クラヴサン(チェンバロ)音楽において、形式上はフランス風音楽の伝統の上に立っていますが、オペラにおける序曲等の器楽やクラヴサン音楽にはギャラント様式(1750年代~1770年代頃に流行した音楽様式でバロック音楽の複雑さから、古典派音楽のシンプルさへと向かっていく中に登場した、素朴かつ流麗な主旋律の重視に伴った和声法の抑制)や古典派の先駆と見られるような特色も数多く現れます。理論家としても有名で、機能和声についての最初の体系的な理論書を残した事で知られています。
ところで「ラモーのガヴォット」というと人によって「あぁ、アレね」というのが異なる作曲家としても知られております(ホンマかいなw)。
① イ短調 : クラブサン(クラブサン曲集/Nouvelles suites de pièces de clavecinより)
② ホ短調 : オーボエ(抒情悲劇『カストールとポリュックス/Castor et Pollux』より第4幕)
③ ニ長調 : ヴァイオリン(オペラ=バレ『栄光の殿堂/ Le Temple de la Gloire』より第3幕)
①は「ガヴォットと変奏」「ガヴォットとドゥーブル」とも表記され、冒頭に提示されるガヴォットを主題として6つの変奏曲がつづくチェンバロまたはピアノ奏者にとっての「ラモーのガヴォット」。
②はオーボエ奏者のみが知っているガヴォットとして有名(有名と言っていいのかw)。
そして③が全国のスズキメソードで習ったスズキっ子が知っている「ラモーのガヴォット」であります。
バロック時代の和声進行パターンではありますが、やはり旋律を重視した歌モノであることには違いなく、そしてそれがとても美しい名作のひとつと言えます。
とは言いながらよさげな録音がないのがさみしいところですが。
①ジャニーヌ・アンドラード(Janine Andrade)
スズキメソードの譜面とは若干異なるアレンジの譜面でさくっと弾いています。
ジャニーヌ・アンドラードはフランスの女流ヴァイオリニストとしてオークレールやヌヴーとも肩を並べる奏者であったようですが、録音数があまりに少なく余り知られていません。彼女はフランス/ブザンソン生まれ(1918年-1997年)、本名はジャニーヌ・マリー・ルイーズ・アンドラード。1972年に脳卒中による失語症と右半身麻痺の影響で引退するまで、フランスで活躍していました。
②デビッド・ブリックマンまたはパトリシア・サンウ(David Brickman/Patricia Sunwoo)
いわゆるリファレンス用です。
③イギリス室内管弦楽団(The English Chamber Orchestra)
これはアレンジ前の原曲を知るための一曲。
とても美しい演奏です。
ま、そんな感じでまた次回。