【鈴木バイオリン指導曲集/スズキメソッド】第6巻~ ラ・フォリア(La Folia)~

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「オレ、ちっちゃい頃ヴァイオリンやってたんだよね~」
「へ~。スズキ?」
「うん、スズキメソード」

っていうくらいにヴァイオリンを習っていなくても有名なスズキメソード。
メソッドじゃないの?というツッコミはココではさておく。

【鈴木バイオリン指導曲集】
編著:鈴木鎭一
出版:全音楽譜出版社
巻数:全10巻
価格:約3千円(CD付き)
表紙:全巻共通で緑色の表紙が目印

【第6巻】
ラ・フォリア:コレルリ
ソナタ第3番:ヘンデル
アレグロ  :フィオッコ
ガボット  :ラモー
ソナタ第4番:ヘンデル

ポジション移動で言えば第6ポジション、第7ポジションまでの音域が登場する。
と同時に一曲一曲の重みが増してくる巻ですな。

Violin Sonata in D minor, Variationen über ein Thema von Farinelli “La Folia” Op.5-12
(ヴァイオリン・ソナタニ短調 ファリネルリの主題による変奏曲『ラ・フォリア』作品5-12)
アルカンジェロ・コレッリ(Arcangelo Corelli, 1653年‐1713年)

『版が多過ぎてどれも変奏が違うマジック』

前回も「新しいヴァイオリン教本第5巻」で取り上げましたが、同じ曲が収録されていますが、ヴァリエーションが異なるという点で、よくよく見ていくと結構違っている。
例えば「スズキ・メソード/鈴木鎮一ヴァイオリン指導曲集 6」と「新しいヴァイオリン教本第5巻」は冒頭と最後は同じだが、中間部のヴァリエーションは同じところもあれば全く異なるところもあり、結果的に最終難易度も変わってくる。
なお、「新しいヴァイオリン教本」なんて途中に猛烈に難しいカデンツァが挿入されており、コレって段階の学生に対してどうなのよ?というレベル。
海外の譜面も幾つか出版社によって異なり、編者によっても変わるので(フランチェスカッティ編とかあるw)、もちろんリファレンス用の音源もちょこちょこ異なることになる。
基本線はスズキメソードにはスズキ独自の旋律が含まれつつ、6巻にふさわしい技術で記載されているのに対して、新しいヴァイオリン教本では5巻にはちょっと難しいかな?って言う部分がちらほら(カデンツァとかね)。

まぁ、そういうこともあってこちらを選択される方も多いと聞きます。
と、いうことで以下。

 

『ラ・フォリア』

「サラバンド」はスペイン系の舞曲の一種で、3拍子と付点音のリズムが特徴の舞曲。他にも「シャコンヌ」とか「アルマンド」とか舞曲の形式がありますが、サラバンドの殆どはゆっくりとしたテンポで演奏される音楽で、「ラ・フォリア」は、その「サラバンド」の一種なのです。
決まった旋律をベースにしていくつかの変奏が展開される音楽で、Folia=「狂気」、「常軌を逸した」などの意味合いを持つ中世のイベリア半島を起源とするテンポの速い舞曲なんですね。これが17世紀になってからテンポが落ちてゆっくりとした舞曲になったというワケ。

しかも、いわゆる曲の形式であるので、決してコルレリの専売特許ではなく、数多くの作曲家たちがこの「La Folia」を作曲しています。ところが、現代においても、なお哀愁漂いつつも時として切れ味鋭いメロディックな変奏曲はコルレリ以外に無く、結果的にコルレリ作曲『ラ・フォリア』みたいな扱いになってしまっているのです。
『ファリネルリの主題による変奏曲作品5-12(ラ・フォリア)』なのにね。

 

『オールドスタイルで攻めるなら』

オールドスタイル、と言っても古楽のスタイルで攻める、と言うことではありません。た多少古臭くても、良い音、良い響きで演奏する、ということを目指します。

① Arthur Grumiaux

古楽器の演奏が好きな方にとっては、密度が濃くて平坦な演奏、と評されることもありますが、音質は均一で安定していて、響きが豊かであり、かつ見事に歌い込まれているという点でこれ以上ないんではないか?と個人的には思います。

 

② Nathan Milstein

グリュミオーに比べると録音のせいもあるけれど少し硬質な音色。
それでも優雅でステキな演奏。かつここで有難いのはHubert Leonardの編曲版を使用しているという点で、『新しいヴァイオリン教本』を使用されている方には一応参考になる、というもの。まぁ、カデンツァの途中でバッサリとカットしたりするなどして短縮化が図られているので、すべてのリファレンスが納められている訳ではないですが。

③Henryk Szeryng

録音は1981年。比較的シェリングにしては後期の録音で、環境も良かったのかこれもまた素敵な演奏。
というよりステキ、と言う言葉では片付けられない「気合い」というか、「蓄積された技術」やいわゆる「芸術性」みたいなものが発散していて、所詮顔の見えない録音なのに猛烈に心を打つ、という演奏と言えばいいでしょうか。
だいぶ思いを込めて(無論他のヴァイオリニストも思いを込めて弾いていると思いますが)いるな、という傑作です。

ということでまた次回。

(2018年1月14日追記)

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