『楓物語(メイプルストーリー)』
基本情報は以下の通り。
分布エリア : ヨーロッパ、北アフリカ、北アメリカ
平均樹高 : 20M~40M
平均直径 : 0.5M~1.5M
比重 : 0.55~0.70
材質 : 比較的硬く弾力性がある。
メイプルは楽器で使用されている木材の中でもポピュラーな材のひとつ。
和名は楓(カエデ)。紅葉(モミジ)もその仲間ですね。
樹種や環境の差によって密度や木目に違いがあり、一概にメイプルといっても世界中に約130種あるゆえ、それぞれに特徴があります。
ちなみに日本国内には約28種の楓が生息しています。ってことは残り100種類が海外なんですね。これだけの種類をざくっと楽器に使用する木材、という意味で大別すると2種類に分類されます。
『ハードメイプル(Hard Maple)』
材質は硬く、アタック(音の立ち上がり)、サスティン(音の減衰)ともに優れた音響性能を誇ります。さらに強度・耐久性に優れ、構造上負荷の掛かるネック材に多く使用されています。また、塗装と経年変化により奥深い色の変化を楽しむことが出来ます。ちなみに材色は時とともに深い飴色になります。
ヴァイオリンのネック以外にも側板、背板にメイプルが使用されています。基本的にはハードメイプルが主で、特に旧ユーゴスラビアのダルマチア地方や、ボスニア地方のバルカン山地で産する通称バルカン材が最も適していると言われています。バルカンメイプル(Balkan Maple)、ボスニアンメイプル(Bosnian Maple)ってやつですね。
メイプル材の中でも寒い地域で目が詰まっており、安定した加工特性と音響特性が非常に優れているためですね。
ヴァイオリンに限らず、ピアノやギターにも使用されており、楽器以外にもその硬さをいかして野球のバットなんかにも使われたりします。一般的にはアッシュ材やタモ材ですが、あのバリー・ボンズはメイプル材なのです。ってこともあって普及しました。
ちなみにメイプルシロップが取れるのもハードメイプルに分類されるシュガーメイプル(サトウカエデ)だったりします。
『ソフトメイプル(Soft Maple)』
強度的には25%ほどハードメイプルに比べて落ちる(※諸説あり)こともあって、比重もその分軽いものとなります。とは言え、強度面で落ちることから、負荷の掛かるようなネック材には向いておらず、むしろその美観的特徴(杢目)を活かして側板や背板などに使われることが大半です。
なお、加工はハードメイプルに比べると容易ではあるものの、密度がハードメイプルに比べて低いことから、加工安定性が落ちて割れやすかったり、反り易かったりするので乾燥に注意する必要があります。
また、その特徴から、音質的にハードメイプルに比べてアタックや低音域でのサスティンにおいて劣る場合もありますが、木材の鳴りという点ではソフトメイプルに軍配が上がります。レッドメイプル、シルバーメイプル、ボックスエルダー、ビッグリーフメイプルなどの総称でもあります。ヨーロッパのシカモアメイプルも音質的にはこちらに分類されるようです。
『ビジュアルから分類するメイプル』
杢目(もくめ)または木目。
“杢(もく)、杢目(もくめ)またはフィギュア(英語:figure [fɪɡjər])とは木材の木目・木理のうち、柾目とも板目とも異なって稀に現れる複雑な模様のものを指す。その希少価値・審美的価値から珍重される。原木の中で生ずる局部的なねじれや湾曲のある箇所、または瘤の部分などを切り出した際に現れ、これは木の切り出し方によっても決定的な影響を受ける。”
~Wikipedia~
古代より、自然が生み出すマジックを工芸品の意匠に取り入れている中で、このメイプルの働きは相当なものが有ります。即ち、産地、樹種、その他の条件によって生まれるものではあるのですが、人為的に作り出せないものなのです。
それを杢目のタイプごとに分類していくと12種類くらいになります。
ちなみに木材のカットの仕方によってもこの
杢目の出方が変わってくるので、これぞプロの目利きとワザが活かされた世界もないでしょうね。
バーズアイ(bird’s eye)
鳥の目みたいに見えることから鳥眼杢とよばれます。
ソフトメイプルには発現せずハードメイプル(シュガーメイプル)にしか出ないものの、発現確立が1%程度らしく非常にレア。かつシュガーメイプルに現れるということから蜜が色目に強く出てしまう事を恐れて、白い材で提供するために真冬の蜜が出ない時期だけの伐採としている超貴重な材なのです。
ブリスター(blister)
ブリスターとは火膨れ、水膨れの意味。
バーズアイより大きくキルトよりは小さい円形状の杢目をいいます。
バール(burl)
瘤(コブ)杢。コブが出来た部分をスライスするとこのようになります。
ある意味、奇形部が無いとどうしようもないのでこれも貴重。
ただ楽器には使いにくいです。
カール(curl)またはカーリーメイプル(CurlyMaple)
縮み杢、ねじれ杢、曲がり杢ともいう。英名はリボンのように捻れたものはribbon curlと呼ばれます。
ディンプル(dimple)
波状杢。
フィドルバック(fiddle back)
タイガーメイプルのような縮み杢で、ヴァイオリンの裏板のような杢を指します。バイオリン弾きであれば一般的な裏板はみんなコレで、見慣れてますよね。
フレイム(flame)
炎にゆれるような、見る角度、光の加減から様々な見え方を持つ、いわばメイプル材のひとつの代表的な杢。ある程度の目の太さを持ったものを指していて、特に太いものをwide flameともいいます。
ゴースト(ghost)またはアンブロシア(Ambrosia)
一種のスポルテッドメイプル。雨水やバクテリアが内部に入り込み、木材を腐食させてしまったり、ないしは何らかの病気にかかったことで杢目が出来てしまうもの。ヴァイオリンでは均一なトーンと強度が求められるのでまず個々の部材はRejectされますが、モノ好きなギタリストなどがこの部分を「味わい」として楽しんだりします。
ピンストライプ(pin stripe)
ピンストライプ。かなり細目で直線的な縞模様を指します。
Quilted(キルテッド)
玉杢。鱗状に杢目が広がります。これもまたメイプル材の杢目の中でもひときわゴージャスな杢目として有名です。
これをギターのトップ材に使用したことでも有名なGibson Les Paul Standardが下記。
Spalted(スポルテッド)
スパルト、スポルト。虫穴などから雨水やバクテリアが内部に入り込み、木材を腐食させてしまったり、ないしは何らかの病気にかかったことで杢目が出来てしまうもので、バクテリアによる汚れが入った為に暗い縞模様を呈したものです。こいつをギターに使用すると以下。
tiger stripe(タイガーメイプル)
タイガー・ストライプと言われ、和名は虎杢(とらもく)、虎目(とらめ)。
縞模様全般を意味しています。
『まとめ』
メイプルには非常に多く杢目が出やすいので、いろいろなパターンから様々な工芸品に使用されますが、ヴァイオリンではフィドルバックに代表される杢目が殆どです。
従ってバーズアイメイプルをヴァイオリンに用いるとこんなんになります。
「北海道を持つとしたらこうなる!」的なバカリズムのネタみたいですが、こう見るとさもありなん。
音響的にもハードメイプルの杢目ゆえに、クリアなサウンドなのかもしれません。
ということで、また次回。
[…] 詳しくはこちらを参照。 →【木材図鑑】メイプルシロップより魅力的?吸い込まれそうな杢目を持つメイプル […]
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[…] メイプルにはほかにも、バーズアイメイプルとかキルティッドメイプルとか、様々な模様があらわれることで有名です。このページとかに見本があります。バーズアイメイプルは特に貴重だそうです。このクラシックギターも見たことあるのですが、私的には正直ちょっと気持ち悪い見た目と感じました。この辺りは個人の嗜好もあるので一概には言えません。 […]
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