【新しいヴァイオリン教本】第5巻 ~ 瞑想曲(Méditation)~

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“Méditation” D moll from “Souvenir d’un lieu cher, Op.42” by Peter Ilyich Tchaikovsky
(チャイコフスキー作曲『なつかしい土地の思い出』作品42より瞑想曲/Meditation 二短調)

『瞑想曲って何やねん』

間違いなく有名な瞑想曲としては『タイスの瞑想曲』
元々は独立したヴァイオリンのソロではなく、オペラ『タイス』の第2幕の第1場と第2場の間で演奏されるヴァイオリンの間奏曲で、コンサートマスターが歌い上げる一種の名場面です(曲が有名だからね)。
あらすじとしては、かっちんこっちんの修行僧(パダワンみたいなもんですなw)アタナエルが故郷のアレキサンドリアに戻ったら、スーパー美人でエロエロ、高級娼婦のくせにヴィーナスの巫女のタイスのせいで街はめちゃくちゃに怠惰に。この荒れ模様を嘆き悲しみ、タイスをダークサイドから戻すべく説得して、タイスが思い悩むシーンがこの『タイスの瞑想曲』。
結果、タイスは尼僧院に入りますが、パダワンのアタナエル君はタイスへの恋の虜になり修行僧的にはダークサイドに堕ちる狭間で悶え苦しみ、タイスへ猛烈アタックを試みるも尼僧になったタイスには届かず、挙句の果てにタイスは天に召されるという、スターウォーズに置き換えるとなんとなくイメージが湧く(置き換えないとイメージが湧かないのもどうかしてるがw)娼婦と修道僧の恋愛モノ。

話はいつものごとく逸れましたがw、瞑想曲の具体的な定義は調べても出てこないのですが、「穏やかで瞑想的な雰囲気をもつ器楽曲」もしくは「宗教的な契機をもたせる瞑想(心を静めて神に祈ったり、何かに心を集中させる)の曲」と言えます

 

『じゃあチャイ子の瞑想曲って何よ?』

このチャイコフスキーの「瞑想曲/ Méditation」は『なつかしい土地の思い出』(Souvenir d’un lieu cher、作品42)は、彼が1878年に作曲したヴァイオリンとピアノのための小品集で以下の3曲から構成されています。

1)瞑想曲 Méditation (ニ短調/D moll)
2)スケルツォ Scherzo (ハ短調/C moll)
3)メロディ Mélodie (または「無言歌(chant sans paroles)」。変ホ長調/Es Dur)

 

このうち第1曲目は、「ヴァイオリン協奏曲 ニ長調」の中間楽章の予定だったが短く仕上がってしまい差し替えに。この悲運の中間楽章をベースに2曲追加して仕上げたのがこの『なつかしい土地の思い出』。もともとこの第1曲目はヴァイオリン協奏曲を書いていたスイス滞在中にできた曲、ということもあるので、「なつかしい土地」は母国ロシアか?と思いきやスイスの滞在地クラランを思って書かれたもの。実のところ同性愛者であることを隠すためのカモフラージュとも言われるアントニーナ・イヴァノヴナ・ミリュコーヴァとの結婚及び離婚のドタバタで心を病み、療養のために訪れた場所、なんですね。

と、いろいろ調べていくと第3曲目「メロディ」がヴァイオリン協奏曲の緩徐楽章に使われる予定だった?との説も出てきており、もう何が何だか良く分かりませんw。

 

『ちなみにオケ伴奏版もあるよ』

チャイコフスキーが亡くなった1893年の3年後、1896年にアレクサンドル・グラズノフ(Aleksandr Glazunov)が『なつかしい土地の思い出』にオーケストラ伴奏を付けた版を発表しています。この伴奏版もえらく秀逸で、オーケストレーションに掛けては本家魔術師的なチャイコフスキーにも引けを取らない仕上がりとなっている(少なくとも原曲を知らなければチャイコフスキーがオーケストラ伴奏も作曲したと思うかもしれない)。もちろんここはチャイコフスキーならこうはしないよね、という対旋律が有ったりするけれど、それでも素晴らしい出来。

 

『どちらにせよ難曲』

テンポはゆっくりと流れていくが、チャイコフスキーにありがちな半音階の移動がやたら多く、さらうのにえらく苦労する(指のポジショニングに悩むw)。またテンポがゆっくりだからと言ってフレーズがゆっくりかと言えば決してそういうわけではない。
という意味で結構大変。まぁ、ヴァイオリン協奏曲の緩徐楽章としようとしただけあります。

 

①原曲版(ダヴィッド・オイストラフ

 

②オーケストラ伴奏版(レオニード・コーガン

 

③『なつかしい土地の思い出』全曲版(諏訪内晶子

 

ということでまた次回。

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