【悲報】アマチュアオーケストラ乱立のお知らせ

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まずは飛び込んできたこのニュース。

『FREUDE(フロイデ)管理人の中村肇さんご逝去』

アマオケにいるならば誰もが一度はアクセスしたであろう「FREUDE」
このサイト、いまはもうアクセスできない状態になっている。これは2016年12月に運営・管理をすべてお一人でやられていた管理人の中村肇さんが逝去されたから、という。
中村氏は演奏会情報などのメールは全部自分でチェックし、確認のうえ掲載していたゆえ、リンクの管理、情報の正確性、どれをとっても安心のサイトであったし、何よりアマチュアオーケストラに焦点が絞られていたので、聴きたい曲を演奏するオケがないかな?とか、引っ越しや転勤になった際に現地のアマオケを探すため、このサイトは非常に使い勝手が良かった記憶がある。他のサイトが、アンサンブルやブラバン、合唱団などの演奏会なども掲載しているのに比べると、とても手作り感は満載であったけれどシンプルでよかったワケ。
サイト構築から情報の管理・アップロードまでお一人ででされていたらしく、運営を引き継ぐなどは困難なため更新が停止、その後閉鎖と相成った次第。

その後、アマオケ情報は株式会社スナッピー・コミュニケーションズが運営する『オケ専♪』がその役割を担っているように思う。ここはオーケストラのみならず、アンサンブル、ブラバン、合唱団、ジャズバンドあたりまで網羅してしまうので、やはりターゲットが絞られていたFREUDEに比べるとリンク登録がダブっていたりと管理が甘いのと、営利目的も含まれるので、微妙なところもあったりする(とは言っても今回の記事を書くにあたってはこの『オケ専♪』に登録されているデータに基づく)。とは言っても、営利目的の会社がここまでアマオケフレンドリーな環境を提供してくれているあたり、ギリギリのバランスというかホスピタリティーをもった運営をしてくれているのだな、とは思うので、コレもまた非常に有難いサイトである。

『ところで、日本にアマチュアオーケストラって幾つあるか知ってます?』

上述の『FREUDE』主催の中村さんは「日本全国にアマオケが1,000団体以上ある」とか「東京都内に400以上」といったコメントを残されている由。
実際カテゴライズが難しいし、室内アンサンブルも管弦楽団の形式をとっていたりするところもあるので、一概にバッサリとアンサンブル団体を排除する訳にもいかない。

当方が『オケ専♪』のデータをもとに重複データを削除したりして整理した結果は以下の通り。

<カテゴリー>2017年11月10日現在
(1)オーケストラ:824団体
(2)アンサンブル:443団体

このうち(2)が微妙なカテゴライズで、「弦楽八重奏団」とか「クラリネットアンサンブル」みたいなのもあれば「XX記念合唱団・管弦楽団」みたいなのもあって、ドタ勘では約半数が管弦楽団的な団体に見える。とすると443団体の約半数、約220団体がオーケストラのカテゴリーに入っても良い団体、と言える(ちょっぴり乱暴だけどw)。

ってぇことはですよ。
約1000団体がアマチュアオーケストラとして存在していることになる訳ですね(『FREUDE』中村さんのコメントと一致!)。
1団体当たり平均30~40人のメンバーがいるとしてオケ人口は3~4万人!!

このうち東京・神奈川・千葉・埼玉の首都圏(茨城・栃木・群馬ゴメン)でみると以下。

(1)オーケストラ:534団体
(2)アンサンブル:282団体→141団体(先ほどの「みなしオーケストラ」理論を適用)

なんと東京近郊で約600~700団体が存在していることになるワケ。
これって歩留まり(活動団体と休眠団体の比率)が良く分からないというのが弱点で、上述の「東京都内には400以上」というコメントもあるし、それにしてもコレって「乱立」以外の何物でもなくないですかね。
と思うのです。

ということで、なんでこうなっちゃうの?を考えてみた。

『日本は吹奏楽人口が世界最大級』

まずはこれ。
データの準拠が何処なのか?というところが微妙ゆえ参考値として。
現役吹奏楽経験者は100~120万人、OB/OG含めると500万人と言われる。
とあるサイトでは「吹奏楽連盟加入団体数は、小学校1053、中学校6964、高校3768、大学320、職場104、一般1779、合計13988団体」という情報もあるくらい。

この巨大な母数から輩出されるプレーヤーの一部がオーケストラに加入する。
オーケストラの人数構成は、例えば本来2管編成であれば、総勢50名程度のうち管楽器は20名弱、4管編成であれば、総勢100名程度のうち約30名強が管楽器であるハズだが、実際の団体構成人員は約半数が管楽器だったりする。

これはやはり管楽器人口の多さからくる問題。
その上、オーケストラでは編成上ポストが上述の通り限られる(2管編成:20名弱、4管編成:30名強)。それゆえに「乗り番」「降り番」という出番をローテーションで決める団体が殆どである。

『つまりなんだね、ポストがないっちゅーことか?』

オーケストラの選曲プログラムは大抵以下のセオリーに則っている。

(1)前プロ:序曲系 演奏時間10~15分
(2)中プロ:組曲・協奏曲・交響詩系 演奏時間20~30分
(3)メイン:交響曲・交響詩系 演奏時間30~50分

アマチュアオーケストラの演奏会費用は、総額を人数割りすることで運営されているところが大半と思われるが、そうなると各人の拠出費用は等しく同じでありながら、出番の長さは弦楽器と管楽器で差が出る、という視点で語ってみよう。

極端な例で、こんなプログラムだったとしよう。

(1)前プロ:モーツァルト 序曲「魔笛」
(2)中プロ:チャイコフスキー ピアノ協奏曲第1番
(3)メイン:ドヴォルザーク 交響曲第9番「新世界から」

いわゆる名曲プログラム。
ボリュームも前プロ7分、中プロ30分、メイン45分とまぁまぁなかなか。
管楽器の乗り番的にも序曲からメインに至るまで2管編成。

これに疑義を唱える人がいるとする。
オケに詳しい人ならすぐわかる。

そう。

チューバとシンバル(打楽器)。

どちらもメインのドボルザーク交響曲第9番「新世界から」にしか出番がない。

それならばまだしも、であるけれども、なーんと

チューバは第2楽章の冒頭と最後。16小節のみ。
シンバルは第4楽章の第1主題の後半(1分50秒過ぎ)で全楽章を通してただ1回。

コレしか出番がない。ぐふっ。

片や弦楽器は合計80分強弾き続けるプログラム。
プログラムの統一性を求めるならば、この「名曲プログラム」としては有りなはずなのに、アマチュアオーケストラでは間違いなくこのプログラムは選曲に上がらない。いや、挙げさせないはず(チューバとか打楽器がエキストラの団体は除くけどw)。

例えばアナタがチューバ吹きだとしてこう思うだろう。

「こんなオケやだ!全曲吹きたいよ!なんであればもっとブリブリ吹きたいよ!」

チューバや打楽器奏者はこういう思いが募ったっておかしくない。

さてさて、ココは妄想設定でw、さらに、ここで事件が起こる(ことにしよう)。

元々オケの創立者で、かつ自分の出身大学の大先輩(チューバ)が転勤先から戻ってくることに。

このひと猛烈に上手いし、実力主義、かつ年功序列のオケの中では、名実ともに確実に出番は取られてしまう。おまけにチューバは元々出番が少ない(16小節は極端すぎるけど)。

「もうポスト取られちゃうよ・・・どうしよう・・・」

この募る思いを形にするには、このオケで選曲で実権を握って3曲ともチューバがあるような大曲が選ばれるようにするほかない。ところが上述のプログラムを見てもわかる通り弦楽器主体の名曲プログラムを望む嗜好性があるのでプログラムに大曲を入れにくいし、仮にOKとなっても、それでも先輩と出番を分け合うことになる。

「もうこうなったら自分が実権を握ってオケを作るしかないな」
「他にも乗り番であぶれている管楽器奏者を誘ってオケを作ろう」
「選曲基準は管楽器中心で3管か4管編成の大曲、ってことは後期ロマン派以降だな」

と、こうなるワケですね(全てがこうじゃないですが、あくまで極端な例ということで)。

『そして新しいオケが立ち上がった』

もうプログラムは完璧。
(1)前プロ:ショスタコービッチ 祝典序曲
(2)中プロ:ショスタコービッチ ヴァイオリン協奏曲第1番
(3)メイン:マーラー 交響曲第1番「巨人」

さてここで問題が。
弦楽器は建前上3管編成なら42名、4管編成であれば60名程度が必要になるが、前段の吹奏楽人口はOB/OG含めれば日本全国500万人もいる母数の中から輩出すればよいのですが、弦楽器人口はそこまで多くはない。まぁもちろん吹奏楽人口が多いからと言ってすぐそのままオーケストラに来れるわけではないけれどね(発声というか発音が違う)。

それゆえに上述のオケ人口3万人~4万人の半分くらいが弦楽器だとすれば、そこからかき集めなければならないワケ。

ソロ志望でアンサンブルに参加してくれない弦楽器奏者も多いし(する余裕がないw)。

ところがどっこい、オーケストラ未経験者をリクルートするのは大変なので、オーケストラ経験者を採用しようとすると掛け持ちにならざるを得ず、少ない母数がさらに少なくなる。また元々出番の多い弦楽器奏者は練習が大変なので過去演奏経験のある曲を好み、経験のない大曲を避ける傾向がある。この制約条件から人数を集められず、エキストラに頼っても演奏会負担比率が高くなる、結果オケとしてのまとまり演奏会に向けての一致団結力が緩んでレベルが下がっていく、それがモチベーションの低下につながり、新しくできたオケが短命で終わってしまう、というスパイラルに落ちるケースもあろう。

そうしてまた新しいオケが立ち上がり・・・という繰り返しがオーケストラ乱立に繋がっているのではないか?と推測するのである。

その証左に、演奏回数が一桁、または10数回という若いオケの多いこと、多いこと。
そして団員募集は常に弦楽器が不足しており、管楽器は「募集を締め切っております」のフレーズが殆ど。

このバランスが直らない限り、この問題は続いて続くのではないのか?
そう思う今日この頃なのである。

てなことで、また次回。

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