和のメロディがめっちゃJazzyでお洒落だった件

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①まずはじめにDaniel Gaede

まずはこの方を覚えておきましょう。

以前紹介した、圧倒的に上手いウィーンフィルの元コンサートマスター、ダニエル・ゲーデ(Daniel Gaede)。

この写真はウィーンフィルの時に撮影したものと思われ、現在はいい感じにお年を召されています。

右に鎮座されている方は存じ上げません。

 

②編曲家ってスゴイ

さて、話は変わりますが世の音楽でアレンジャーって結構大事な要素を占めていると思いません?

作詞家、作曲家、演奏家はその役割が分かりやすいけれど、アレンジャー(編曲家)って裏方だし中々働きの成果が見えにくい。だけれども、すでにあるメロディーに、コードやリズム、イントロや間奏などを付け、完成された楽曲にするのがごく一般のアレンジャー(編曲家)の仕事であるし、編曲次第で曲のイメージがガラリと変わるし凄い大事。

ポピュラー音楽においては、音楽知識とセンスが必要だし、編曲の作業は往々にして技術的なもの、そのうえ上述の通り地味な作業なだけに冷遇されることも多いですけどね。
オリジナルから、ゼロから曲を作る作曲家には印税が支払われるけれど、日本では通例編曲家に対する印税分配は無いのでしゅよ。つまり、編曲自体の報酬はありますが、作曲家や作詞家に入る「印税」の権利は編曲家にはありません。曲の顔を決める編曲者に対しては、超重要なパートでありながら、その人が書いた編曲がいかに演奏されたり放送されたりしてもビタ一文入って来ないってことですねー。
それであるがゆえに、アレンジャーのみならずプロデューサーとしてクレジットに登録して印税収入を狙う他無い訳ですな。
となってくると、日本には名だたるプロデューサーがひしめいています。
90年代であれば小室哲哉、織田哲郎、90年代後半から2000年代にかけては小林武史、つんく、昨今は亀田誠二、中田ヤスタカあたり?もちろん作曲も手掛けているのでピュアなアレンジャーではないと思いますが。

クラシック音楽の場合、「編曲」でいうなら、例えば交響曲を室内楽サイズに編曲したり、器楽曲をオーケストラ版に編曲したり、というのがまずは筆頭に来ます。
たとえば以前話題にも上がったバッハの「トッカーターとフーガ」におけるオーケストラ版はストコフスキー編曲で知られています。

ちなみに世界で一番有名な編曲は『展覧会の絵』でしょうね。
ロシアの作曲家、モデスト・ムソルグスキーによって1874年に作曲されたピアノ組曲『展覧会の絵』を、1922年にモーリス・ラヴェルが、指揮者クーセヴィツキーの依頼で『展覧会の絵』を管弦楽へと編曲したバージョンが、世の中一般の『展覧会の絵』になっちゃっているというパターン。

あとは地方の民謡を採譜する、というパターンで行くと、ブラームスの「ハンガリー舞曲」(幾つかは完全にブラームスの創作らしいですが)が代表的。じゃあドヴォルザークの「スラブ舞曲」もそうなの?というと実はあれはドヴォルザーク先生の独自の旋律と言われています。リズムや歌い回しがスラブ舞曲なのですね。

ちなみにブルックナーの交響曲は校訂者によって原典版、ハース版、ノヴァーク版とありますが、これは編曲ではなく校訂という作業らしい。ここの差が良く分からんのですよ。それぞれの版によって曲の印象が異なる、という点においては編曲とも言えなくもないのだけれどもね。
・・・とまたいつものクセで話が逸れる逸れるw。

上述の圧倒的に上手いウィーンフィルの元コンサートマスター、ダニエル・ゲーデ(Daniel Gaede)の収録曲を調べていて、和のメロディを収録していることを知ったのがつい最近。

 

③和のメロディがJazzyでオシャレになる瞬間


もともと日本の歌曲は民謡から発展しているのが殆ど、あとは近代の作曲家たちが西洋音楽の様式を一部取り入れつつも、自然で自由に流れるテンポが基本なので、いわゆる小節線で区切られるような音楽じゃない、ってのがよくあるパターン。

これにクールかつJazzyな響きのコード進行を与えて、メランコリックな曲想を変えることなく、しかしながら古臭さ、というか民謡が持つ独特の泥臭さを極力排除したような、それでも大事な魂は残しているような、そんな見事な翻訳に出会った、という感じかしら。

CDにおける演奏者は、ピアノをベルリン在住のPhillip Moll、ホルンをヒューストン交響楽団、ベルリン放送響の首席Thomas Bacon、フルートはミラノスカラ座管弦楽団の首席、Davide Formisano、そしてその師匠のJean-Claude Gerard他。実力派揃いじゃん、と。

ここにDaniel Gaedeが3曲参加していて、五木の子守唄(五木ひろしの子守歌じゃなくて熊本県五木村の子守歌)、刈干切唄(高千穂の民謡)、そしてお江戸日本橋
どれもめちゃくちゃオシャレに弾いていて、かつ、ダニエル・ゲーデ(Daniel Gaede)の美音が堪能できる良いディスクになっております。こういう音楽の消化の仕方出来るのは素晴らしいなぁ、って思います。

『五木の子守歌』は、原曲の良さを生かしたという点で3曲の中では一番民謡ぽい。それでもJazzyなコード進行にめちゃくちゃセンスを感じる逸品。冒頭の深遠な響きからはじまる歌いっぷりに、豊かな響き、かつ上品なDaniel Gaedeの音が活かされてます。
メランコリックなまま曲を閉じるその響きたるやもうなんも言えません。

この3曲の中で、フランス印象派の香りを感じるのが実は『刈干切唄』。全く知らないメロディーではあったのだけれど、これめちゃくちゃステキ。いや、もちろん原曲は全然異なることは分かっておりますし、コレってアレンジの力であるのも承知。しかし、ここまでオシャレにできるのか・・・と。
どことなく古いクライスラーのヴァイオリン小曲集に出てきそうなメロディと響き。
ゆったりとした流れに身を任せつつ心地よく静かに終わります。

という点において『お江戸日本橋』はいちばんJazzyかな。
ルパンを作曲した大野雄二っぽい。
Daniel Gaedeのダイナミックな演奏も相まってステキです。

 

と同時に、このCDにおいて全曲で編曲に携わっている丸山和範氏スゲーと思うワケですよ。
いままで褒めちぎってきたDaniel Gaedeもスゲーなんですけどね。

てな感じでまた次回。

(2018年1月26日更新)

和のメロディがめっちゃJazzyでお洒落だった件” への2件のコメント

  1. […] 正統派ではないけれど、2017年11月7日には「和のメロディがめっちゃJazzyでお洒落だった件」として和のメロディをJazzyにアレンジした録音を紹介。 […]

  2. […] 正統派ではないけれど、2017年11月7日には「和のメロディがめっちゃJazzyでお洒落だった件」として和のメロディをJazzyにアレンジした録音を紹介。 (現在Amazonでは入荷しておらずiTunesでしか聴けないみたいですが) […]

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