ヴァイオリンをチューニングする方法は世の中だいたい2つに大別される。
1)A線=440~442Hzに合わせて調弦、その後D線、G線、E線において響きにうねりが出ないように調弦する
2)A線=440~442Hzに調弦した後、D線、G線、E線もチューナーで合わせる
慣れている人であれば(1)をチョイスするだろうし、初学者であったり師匠の教えによっては(2)にこだわる人もいる。どちらも一長一短の方法であり、なにゆえに一長一短なのかを理解する必要がある。
って、堅苦しい話になるよりも前に、そもそもチューナー眺めていたら気になりませんか?あの「▼(三角)マーク」。
かつてはチューナーの針がど真ん中に来れば完璧、多少ずれても▼(三角)マークの範囲内であれば許容範囲だったりするのかなぁ?なーんて独自解釈でチューナーを運用していたりするのですが、でもよくよく見てみたら▼(三角)マークは基準音に対して等間隔に並んでいないことに気づきます。左側の▼(三角)マークより右側の▼(三角)マークのほうが微妙に幅が広い、ということに。。。あれ?
これはまず結論として以下。
『ある音に対し、純正の長3度上または短3度上にチューニングするときは、メーターの”▼(左側の三角)”(-13.7cent)、”▼(右側の三角)”(+15.6cent)を使用します。
純正の長3度上、短3度上にチューニングする方法
A(0cent)の音に対し、純正の長3度上の音にチューニングするときは、音名表示をC#にし、メーターを”▼(左側)”に合わせます。
A(0cent)の音に対し、短3度上の音にチューニングするときは、音名表示をCにし、メーターを”▼(右側)”に合わせます。』
「Korg Digital Tuner Metronome TM-40説明より」
ん?意味が分からないぞ?ということで、分かりやすく言うと下記のようになる。
純正律の美しい和音を求めるときに、
長三和音(長調の和音)は、目盛0の左にある三角の印(平均律-約14セント)
短三和音(短調の和音)は、目盛0の右にある三角の印(平均律+約16セント)
に合わせる。
ここで平均律と純正律を簡単に整理します(学術的にはちょっと乱暴です)。
平均律:「オクターヴを12個の半音に分けて、ミとファ、シとドの間だけ半音、後は全音にしたもの」
純正律:「周波数の比が単純な整数比である純正音程のみを用いて規定される音律、つまりA=440Hzのとき、1オクターブ下は220Hz、上は880Hzとしてハモる振動数比となるようにして、これらを1オクターヴ内に配列したもの」
そしてたいていのチューナーが平均律で設定されているので、A音をルート音としてハーモニーを構成(純正律)しようとすると、第3音をチューナーに合わせてバッチリだったとしてもハモらない、濁った音になる、という訳。
もっと言うとヴァイオリンの調弦は「ピタゴラス音律」(全ての完全五度および完全四度の音程を純正にする音律)で調弦されており(調弦されているはずで)、完全五度を純正に調弦した弦楽器は、ピタゴラス音律の上にある音を主音に取れば、全ての調で開放弦を利用したスケールを得ることができる。これが、弦楽器の音程の基本構造。
それゆえに音階によっては「その音は高めに!」とか「その音は低めに!」と言われたりする訳です。その目安が▼(三角)マークに表れている、ということです。